Tapestry Artist
Tapestry Artist – 鬼原美希
織物アーティスト、鬼原美希。彼女は日常のなかに潜む異常な光景に焦点をあて、それをデフォルメしてポップで楽しいアートに仕上げる。様々な感情を心に留めて、その想いとともに一本一本織っているのだ。彼女が主としているのは「綴れ織り」と呼ばれるもので、たて糸の密度を粗くしてよこ糸を表面に出すことで絵が浮かび上がってくるというもの。その歴史は古く、紀元前5世紀から始まっていたといわれている。そんな「綴れ織り」に彼女が出会ったのは多摩美術大学2年生の時だった。友人達と会う時間すら、作業に注ぎ込むほどに綴れ織りにはまっていった。出会った瞬間の当時を振り返ると、「これは一生続けていけるかもしれない」と感じたという。その後、彼女は世界のテキスタイルを知るきっかけを作る。船旅での世界一周(23ヵ国)に挑んだのだ。土地土地の素材による織物の文化を学んだ。様々な製法に機械化が増え、アートの中にもパソコンなどの作品が増えてきた昨今だが、彼女はあくまで「手織り」にこだわる。日々蓄積してきた想いから生まれた作品。その一本一本に想いを込めて織っている。それはまるでピアノを奏でるかのようだ。それほど織る工程そのものが作品として映る。世界を見て広がった彼女の作品はこれからも彼女の成長とともに形を変えていくだろう。それは、見る人にエネルギーを与えてくれる。