Artist
Artist – 南正彦
「人間」に心惹かれ、人を描くことを模索し続ける美術作家 南正彦。彼が画家として最初に選んだ素材は油絵だった。しかし、人物を描いていても自分の描きたい「人の心」までは描き切れていないと悩んでいたある時、ふと人物を外した風景を描いてみた。思い切って油絵からは外れて素材は鉛筆、そして黒のコントラストが美しい木炭に導かれるように手が伸びた。鉛筆と和紙から描かれる温かみのある風景。木炭のコントラストが人の心を解放しやすくなる風景。まさにそこに映し出された作品は「心象風景」そのものであった。これこそ南正彦のスタイルが表れた瞬間だった。誰もがどこかで見たことのある自然の風景、しかしその中から感じられるのは人間だからこそ想起される幼いころの懐かしい風景、大切な人との想い出…。同じ作品を見ていても見る人によって感じる色、におい、風景のその先の世界が変わってくるようだ。油絵から鉛筆へ、人物から風景へと作風を変えるにしたがって彼自身の描きたい「人間の根底にあるもの」が少しずつ見えてきたようだ。なるべく自然に近い素材で、見る人を温かく包み込む彼の作品は人の心を描く「心象風景」となって、国境・世代に関係なく感動をよんでいる。南が人々に届けたかったのは見る人の感じる「心との会話」であり、「調和」である。南正彦の作品を是非見て欲しい。そこに映し出される空気の匂いや、どこか懐かしいあの頃、時間の経過を忘れてしまうほどの穏やかさ。見る者の心をシンクロさせてくれる南正彦の世界観は現代社会で生きる全ての人々に必要と感じた。